なかみ・みづきの灰だらけ資料庫(書庫)

~仲見満月が言葉を折る灰色の部屋~

専門職大学の創設に関する私見~キャリアの多様性における「学位」授与の重要性~

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一、はじめに

今回は、専門職大学のお話です。ややこしいですが、ロースクールと呼ばれる法科大学院、職業的な学校教員の養成を目的とした教職大学院等の専門職大学院とは、別の高等教育機関です。ビジネスの現場で専門的な力を求められるという意味では、専門職大学は、専門職大学院と養成後の人材像は近いのかもしれません。

 

ちなみに、「仲見満月の研究室」で取り上げているのは、主に研究教育機関であり、研究者を養成することが中心の研究大学院です。今回は、中高の学校教育の延長線上のキャリア教育という文脈で、この専門職大学を考えてみたいと思います。そういうわけで、ここ「灰だらけ書庫」を更新するに至ったわけです。

 

今月に入って、専門職大学の法的な設置整備がぐっと進んだというニュースを目にしました。そういうわけで、タイムリーに取り上げることにいたしました。

 

 

<今回の内容>

二、そもそも、専門職大学って何?

話題の専門職大学院って、そもそも、何だろう。疑問に思う読者の方が過半数だと思いますので、次の大学ジャーナルオンラインのニュース記事(以降、ニュース記事)を引用しながら、見ていきたいと思います↓

univ-journal.jp

 

まず、ニュース記事によると、設置しようとしている組織は、「文部科学省の諮問機関・中央教育審議会」(以下、中教審)であり、「名称候補には「専門職大学」、「専門職業大学」が挙がっている」そうです。本記事では、この「新たに創設」される「実習重視」の「職業人養成の高等教育機関」を、専門職大学の呼び方に統一致します。中教審は近く専門職大学に関する答申を出す予定であり、これを受けて文科省は二〇一八年度末の設置を目指し、関係する法案の改正をしようとしている模様です。

 

専門職大学の話をする前に、 「高等教育機関」を説明します。この高等教育機関とは、学校教育法第一条に定められる「幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」のうち、後期中等教育(高等学校)に続く上位の教育機関*1のことです。二〇一七年三月現在の日本においては、この高等教育機関とは、大学(短期大学含む)・高等専門学校を指します*2

 

学校教育法に基づく、大学は「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的(第83条1項)」とし、「その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする(第83条2項)」高等教育機関で、異本的には「学部を置くことを常例」とし(第85条)、「大学の修業年限は、四年」(第87条)です。大学を卒業すると授与される学位は、学士です(第104条)。

 

大学のうち、「その修業年限を二年又は三年とする」大学(学校教育法第108条第2項)で「学部を置かないもの」(同法108条第4項)を短期大学とするそうです。この「短期大学を卒業した者に対し」ては「短期大学士の学位」が授与されます(同法104条第3項)。

 

高等専門学校とは、「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的」とし(同法115条第1項)、「高等専門学校は、その目的を実現するための教育を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与する」(同法第115条第2項)高等教育機関です。「高等専門学校の修業年限は、五年」(同法第117条)とされます。ただし、「高等専門学校を卒業した者は、準学士と称することができる」(同第121条)と規定があります。これは法律上、高等専門学校を卒業すると学位を授与されるわけではなく、「準学士」が一種の「称号」の扱いをされていると考えられます。詳細は、後述の専門学校(法律上では、専修課程を置く教育施設)のところで扱う「専門士」・「高度専門士」と同じ称号のような位置づけのようです。

 

つまり、専門職大学とは、これまでの大学(短期大学含む)・高等専門学校に続き、新たに二〇一八年度末に開設を目指して設置される「職業人養成の高等教育機関」だということが推察できます。大学が「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的(学校教育法第83条1項)」とされているのに対し、専門職大学は職業人養成に特化しているということで、ニュース記事によれば、

 答申素案によると、新しい高等教育機関は4年制、2~3年制とし、大学の一種と位置づける。4年制は学士、2~3年制は短期大学士の学位を取得できる。

 (新設の専門職大学は実習重視、中教審が素案公表 | 大学ジャーナルオンラインより)

とのこと。要は、 目的が高等専門学校に近い大学、あるいは短期大学というのが、専門職大学だと解釈できます。私が色々とインターネット検索していたところ、「学校教育法の一部を改正する法律案の概要【実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関(「専門職大学」等)の制度化について】 」というPDF文書を見つけました。このPDF文書が文科省のものとし、上記の専門職大学の就業年数について、四年制は学士、二~三年制は短期大学士の学位を取得できるとされていることから、どうやら、より細かく見ると、

 ・四年制の専門職大学

 ・二~三年制の専門職短期大学

の二種類を新たに設置しようとしていることが窺えます。ややこしいので、本ブログではこの二種類をまとめて、専門職大学とします。

 

 

三、専門職大学が育成する職業人像と教育内容

この専門職大学で育成される職業人とは一体、どのような人たちなのでしょうか。ニュース記事によれば、次のような職業人像が想定されているようです。

育成する職業人は、観光分野の接客のプロ、IT分野のアイデアの提案もするプログラマーやデザイナー、農業分野の加工品開発も進める生産者などを挙げた。産業のグローバル化や高度化が進む中、現場で自分の能力を高め、改善をリードする人材の養成を目指すことにしている。

新設の専門職大学は実習重視、中教審が素案公表 | 大学ジャーナルオンラインより)

大雑把に職業人のフィールドを分けると、観光分野の接客、IT分野の技術者、農業分野の製品開発をも行える生産者ということ。一読した限り、航空会社やホテルの接客を行う従業員、システムエンジニアやグラフィックデザイナーといったPCを使う技術者、調理師のような、従来の専門学校で養成されてきたビジネスの世界で即戦力となる人材を、専門職大学で育成しようとしているのでは?と感じました。

 

教育内容を見てみると、

 授業は実習を重視し、企業内実習を2年制で通算300時間、4年制で600時間程度学ばせ、卒業に必要な単位の3~4割を実習や演習科目とする。

新設の専門職大学は実習重視、中教審が素案公表 | 大学ジャーナルオンラインより)

ということで、キャンパス内での座学や実習より、将来的には卒業生が就職する現場での実習をカリキュラムに多く盛り込もうとしているように見えます。現在の大学でいう、キャリア関係の科目の企業内インターンシップの時間がより長くなった教育内容と言っていいかもしれません。

 

受け入れ対象の学生については、ニュース記事の報じるところでは「専門学校の卒業生や社会人ら」で、「専任教員は4割以上を各分野で働いている実務家とすることを義務づける」予定とのことです。漫画やDTPが身近だった私が思うに、漫画家やグラフィックデザイナー、イラストレーターを養成するなら、従来の専門学校では、業界で活躍するクリエイターを講師に招くことが多く、従来の大学だと美大・芸大にも同じように業界のプロを教員に採用しています*3

 

こうした専門職大学の職業人像と教育内容から私がイメージしたのは、学士・短期大学士の学位が取得できる専門学校でした。専門職大学は、従来の大学よりも、専門学校に近い性格を持つ高等教育機関のようですが、しかし、従来の専門学校と異なるのは、「専門士」「高度専門士」といった称号ではなく、大学と同じ学士・短期大学士といった学位が授与されるという点です。法に基づいて定められた教育課程をおさめ、その証明となるものが「称号」か「学位」かという違いは、小さいようでいて、実はどちらの「資格」を所持しているかによって、将来、留学や上位の教育機関で学び、研究しようとした時、選択できるキャリアの幅に大きな差が出てくると考えられます。

 

それでは、次の「四、専門学校と専門職大学の違い」で、これらの違いを具体的に見ていきましょう。

 

 

四、専門学校と専門職大学の違い

 その一、法的な位置づけと資金面での違い

最初に、先の学校教育法における大学・短期大学と、一般的な専門学校の違いを見てみましょう。先の「二、そもそも、専門職大学って何?」で同法第1条で見たように、日本における学校の高等教育機関には、大学・高等専門学校が入っており、その大学の中には同法第108条3項にあるように、短期大学が含まれています。

 

専門学校の法的な位置づけについては、次の本の内容を読みながら、説明していきたいと思います。

 

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この本によると、

専門学校は、学校教育法第124条において、「第1条に掲げるものい以外の教育施設」と規定されている。すなわち、第1条で謳う「学校」ではなく、「教育施設」という位置づけられているのである。

(津田敏『学校選びの原則』風詠社、2016年のp.12より)

ということです。ファッションに関する専門学校のモード学園、ITやデジタルコンテンツ分野の人材を育成する学校法人・専門学校のHALなどは、厳密には日本で言う法的な意味での「学校」には含まれないと考えられます。これに対し、先述の高等専門学校は、法的な既定の上で「学校」ということができます*4

 

この専門学校は、1976年の専修学校制度に始まったとされます。本書の説明は次のようになっています。

専修学校に3課程(高等課程・専門課程・一般課程)があり、専修学校に専門課程の設置があれば、専門学校と称することができる。法的扱いの際や高等課程・専門課程両課程を含む表現の場合は専修学校と評されることが多く、専門課程の学校(専修学校専門課程)を表する際は専門学校と言う。

(同上『学校選びの原則』風詠社、2016年のp.12~13より)

高等課程、すなわち卒業すると高等学校資格が与えられる教育課程のある専修学校は、高等専修学校と名乗っていることがあり、高校の教員免許を持っていると、採用試験に応募できることがあります。その上の専門課程が、おそらく、大学・短期大学に相当する高等教育の課程だと思われます。

 

短期大学を含む大学と専門学校の法的な違いは、運営資金の獲得についても言えます。法的な「学校」である大学(や高等専門学校)は、国立、公立、私立と設置者によって分類されますが、それぞれ、国立は国、公立は都道府県から経費・費用が出ます。私立の大学については、法的な「学校」になるので、国から「私学助成金」が出されます。

 

『学校選びの原則』のp.15~16に出ている計算によると、2013年度の私立大学等経常費補助金交付状況について、日本私立学校信仰・共済事業団助成部の発表をもとにした資料をもとにした数字では、学生一人当たりでは15万9000円、学校種別でだと大学15万8000円、短期大学17万1000円、高等専門学校25万4000円となるそうです。法的な「学校」ではない専門学校の場合、一人の授業料・設備費などの納入金が120万円、定員100人で1億2000万円と計算されています。同じ定員が100人の大学があると本書では仮定されており、その場合、大学にはプラスで5億2000万円が助成されたとすると、6億4000万円となります。大学が専門学校の5.3倍の経費と算出されていました。

 

専門学校の学費が高いのは、法的な「学校」ではないため、設備や教育、人件費等に対し、私立の大学等が受け取れる助成金がないので、学生の納入金だけでこれらの費用を賄わなければなりません。だから、私立の専門学校には学費が非常に高いところがあるのです。

 

 

ここでで、話を専門職大学に戻しましょう。もし、学校教育法が改正され、専門職大学が法的に「学校」と既定され、私立の専門職大学が設立されたら、資金面でどのようなことが起こると予想できるでしょうか。これまでの文脈から、国の助成金を私立の専門職大学は受けられるようになり、従来、法的に「学校」ではなかった専門学校に比べて、設備や教育、人件費等に大きな金額を投入することができるようになります。すなわち、大学が受け取れていきたのと同じ額の資金を用いて、これまでの専門学校運営にあった実践的なカリキュラムを持ち込んで、私立の学校法人が専門職大学が成り立つと予想されます。

 

私が軽く調べたところでは、東京工科大学日本工学院専門学校の経営を行う片柳学園が、早くも二〇一九年度に、専門職大学の開設を目指しているニュースが出ていました↓

「専門職業大学」第1号に片柳学園−19年度、IT・アニメ・建築学科を検討 | 科学技術・大学 ニュース | 日刊工業新聞 電子版


 その二、卒業時に得られる「資格」の違い

いよいよ、本題の卒業した時に得られる「資格」の違いについて、先の『学校選びの原則』をもとに、説明していきます。

 

 先に称号の説明をします。『学校選びの原則』p.18によると、

個人や組織が国や社会・特定の集団の中での地位や身分、資格、名誉、功労、業績、能力、個性、特典、権利または故人としての主張、性格といった特性を表明するものを言う。

とのことです。本記事では面倒なので、学位と同じく、特定の教育課程をおさめた者に与えられる「資格」という扱いに致します。

 

今回のニュース記事で設置される予定の専門職大学は、従来の短期大学を含む大学と同じで、「4年制は学士、2~3年制は短期大学士の学位を取得できる」ということです。それに対し、専門学校においては学士・短期大学士といった学位は授与されませんでした。ただ、称号は授与される規定はあります。一九九四(平成六)年、当時の文部省(現在の文部科学省)が「専修学校の専門課程の修了者に対する専門士の称号の付与に関する規定」(平成六年文部省告示第八四号)で「専門士」の称号付与を定めました。その一一年後、二〇〇五年には「専修学校の専門課程の修了者に対する専門士及び高度専門士の称号の付与に関する規定」において、高度専門士の称号付与を定めました。

 

専門士の称号付与の条件は、次の三つです。

 ・修業年限が二年以上

 ・要卒の総授業時間数が一七〇〇単位時間以上

 ・成績評価に基づいて卒業認定が行われていること

 

高度専門士の称号付与の条件は、次の四つです。

 ・修業年限が四年以上

 ・課程の修了に必要なの総授業時間数が三四〇〇単位時間以上

 ・成績評価に基づいて課程修了の認定が行われていること

 

先の専門学校のIT系の技術者養成のコースを置くHALのサイトを見ていたところ、例えばHAL東京に「高度情報処理学科 昼間コース/4年制」というのがあり、説明に「高度専門士 取得可」という表示がありました。おそらく、上記高度専門士の称号が付与される教育課程だと考えられます。

 

これらの専門士・高度専門士に加え、高度専門学校で得られる「準学士」についても調べたところ、学術称号(「学位に準ずる称号」)ということで、厳密に言うと学位には相当しないようです*5。これら「称号」の所持は、例えば、国内の高等教育機関を受験しようとした際、

教育課程としての程度は同じであると判断され、専門士は、短期大学士ともに四年制大学の学部三年生に編入することができ、高度専門士は学士同様、大学院修士課程及び専門職学位課程への入学資格を認められている。

(同上『学校選びの原則』風詠社、2016年のp.19より)

というように、受験資格として適用されるようです。ちなみに、「日本最初のIT専門職大学院」というキャッチコピーをもつ京都情報大学院大学「二〇一七年度 学生募集要項 応用情報技術研究科 ウェブビジネス技術専攻」のp.2の出願資格には、

2 )専修学校の専門課程(修業年限が 4 年以上であること,その他の文部科学大臣が定める基準を満たすものに限る)で文部科学大臣が別に指定したものを文部科学大臣が定める日以後に修了した者

とあり、高度専門士を持つ人を指していると考えらえます。たぶん、高度専門士の資格を持っていたら、専門卒社会人の著者による大学院修士課程の受験体験記~森井ユキ『突撃!オトナの大学院』~ - 仲見満月の研究室で書いたように、入学資格審査を受けなくても、国内の大学では受験できる大学院はあるんじゃないでしょうか?

 

国内では学位と同じように扱われる傾向の専門士・高度専門士の「称号」ですが、大きく「学位」と異なるのは、外国の大学への編入学や入学資格がないということです。つまり、学士や短期大学士といった学位は国際的には通用するけれど、専門士・高度専門士の称号は国際的には通用しないということです。おそらく、高等専門学校準学士も、同じかと思います。『学校選びの原則』p.19には

専門学校卒の人が留学することは少ないとしても、大学、短期大学と専門学校間で学位と称号という格差があるのである。

と書いてあり、そのまま理解していいでしょう。そうか、だから専門学校のモード学園はパリ校を持っているのか!とか、パティシェやコックは、海外留学ではなく、修行に行くというのか!と、妙に私は納得してしまったのです。

 

 

これが専門職大学になると、国際的に通用する学位が授与されるので、授与された人は海外の大学に編入したり、大学院に入学することができたり、進路の選択肢の幅が広がることになると考えられます。可能性として、例えば座学は苦手だけど、技術のある学位持ちの職業人の人にも、海外で学ぶ選択肢が広がるということです。

 

 

五、まとめ:職業訓練に特化した専門職大学の卒業者に学位を与える重要性

ここで、やっと本記事のサブタイトルの話ができるようになりました。今回のニュース記事をもとに、専門職大学が対象とする人を見てみましょう。「学生は専門学校の卒業生や社会人らを受け入れ」とあり、一度、就職して社会人経験を積んだ人を対象としていることが分かります。この専門職大学とは、高卒で就職した後、よりスキルアップをしたいと思った社会人の人たちには、専門的な職業訓練を受ける場としての受け皿になるんです。

 

今回の専門職大学とは、以下の記事で指摘されているように、社会人から大学に行く割合が高い「アメリカで23.4%、オーストラリアで26.5%が25歳以上」で大学に入学するといった諸外国における社会人を受け入れる役割を担っていると考えられます。

agora-web.jp

社会人の大学進学率は、「日本は2.0%と極端に低い割合になっています(参考:大学における社会人の受入れの推進について(参考資料))。」(大学無償化よりも貧困家庭向け職業訓練の拡充を – アゴラより)。

 

専門職大学のポイントとして、もう一つ。高校卒業時、家庭が貧困であり、落ち着いて勉強できない環境にある、あるいは英国数といった座学より、手先が器用であり、身体で技術を覚えるような実技科目が適性がありそうだ、ということが分かっている生徒には、経済的に進学ができず、一旦、就職した後、キャリア的にステップアップしたいと希望すれば、高等教育が受けられる専門職大学は、非常に重要な意味を持つと思われます。

私自身が高校で臨時講師をしていた経験から考えると、どんなに経験があり、生徒にとって面白く、わかりやすい授業ができる教員がいたとしても、それを受ける生徒の誰もが座学中心の科目に向いているわけではなく、成績が伸びない生徒はいます。彼らの中には、非常に手先が器用だったり、観察力があったりして、絵画や彫刻で受賞経験があったり、精密なロボットをくみ上げたり、然るべき職業訓練を受けたら、開花しそうな才能を見せる人もいました。そういった彼らには、より高度な職業訓練を受けられる教育施設に進路を選択する方が、適切だと思いました。

 

家庭の経済的な状況があり、「教育困難校」問題の解決には何が必要なのか | 学校・受験 | 東洋経済オンライン | に登場するような高校の卒業後、就職する生徒のケースでは、大学無償化よりも貧困家庭向け職業訓練の拡充を – アゴラで指摘されているように、「働くと言っても高い給与をもらえる職場で働くことは難しいでしょう」。アゴラのニュース記事は、続けます。

だからこそより高い給与をもらうために職業訓練でスキルをつけてキャリアップができれば、労働者にとっても企業にとってもメリットがあります。しかしながら、私が見た中では実務で耐えられないレベルの低い訓練も多く存在しています。そういったレベルの低い職業訓練を受けたとしても、残念ながら初心者として会社で扱われる事になり、結果的に低い給料しかもらえません。

(大学無償化よりも貧困家庭向け職業訓練の拡充を – アゴラより)

そう、だから国のお金を投入できる法律上の「学校」として専門職大学を設置し、実務で耐えられる高いレベルの職業訓練を提供できるようになれば、と思うのです。

 

高校卒業後、一度、社会人なることで、少し経済的・精神的に余裕のある状態になれる人も一部、いるでしょう。そういう人は、社会人になってから落ち着いて自分の将来について考えられたり、自分のキャリアアップのためにお金と時間を割こうとしたり、できることがあると思います。そういった状況になった時、専門職大学へ進学し、もっと実力をつけたい!実技だけでなく、知識をつけたい!更に、海外で最新の技術を学びたいと考えた時、専門士・高度専門士等の称号でなく、国際的に通用する学位があると、その人の人生には多様な道が見えてくるでしょう。

 

長くなりましたが、私は一旦、高校卒業後に就職した社会人がキャリアアップのため、高度な職業訓練を得た上、海外で高度な技術を身につけたいと希望した場合、その人たちの人生に幅広い選択肢をもたらすという意味において、卒業すれば従来の大学(短期大学を含む)と同じ学位を得られる専門職大学の設置には、非常に意義があると考えております。

 

 

もちろん、「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的(第83条1項)」とし、「その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする(第83条2項)」と法的に規定された従来の大学と、高度な職業人の養成を目的とする専門職大学を同列に「学校」と規定し、後者に学位を授与することについては、様々な方面から批判があることは、存じております。

 

また、本記事の冒頭で触れた専門職大学院の一つ、法科大学院の設置が国策として失敗したと指摘され、同じように専門職大学についても失敗するのではないか?そもそも、職業訓練を施すならば、大学に専門学校を「昇格」させなくてもいいのではないか?というような指摘は、次のアゴラの記事でも指摘されております。

blogos.com

 

大学・大学院という制度的枠組みから見た専門職大学については、余裕があれば、別の記事を「仲見満月の研究室」で立てて、考えたいと思います。なぜなら、今回は、中高の学校教育の延長線上のキャリア教育という文脈で、この専門職大学を考えたからです。

 

最後までお読みいただいた読者の皆様、ありがとうございました。本記事は、ここで終わりです。

*1:高等教育 - Wikipedia参照

*2:前掲載:高等教育 - Wikipediの「日本における高等教育」参照

*3:有名な漫画家では、「風と木の詩」「地球へ...」で知られる竹宮恵子氏が京都精華大学マンガ学部 の教員に採用されています:竹宮 惠子 | 京都精華大学。同大学同学部の教員には、文化人類学で業績を築き、かつ「ナチュン」、現在は「ムシヌユン」を連載している異色の漫画家・都留泰作氏がいる:都留 泰作 | 京都精華大学

*4:なお、一般的に進学者は少ないものの、大学校というものがあります。学校教育法に規定がなく、「学校」ではないけれど、〈高等教育訓練施設〉として、省庁や独立行政法人が設置する教育施設とのこと。有名どころでは、自衛隊の幹部候補生の養成機関として防衛大学校が知らており、他にも気象大学校があります。省庁のやっている大学校は入学試験ではなく、採用私見であり、合格すると省庁職員の扱いとなって給与が出るそうです。省庁がやっていない大学校の国立看護大学校水産大学校職業能力開発総合大学校は、一般大学と変わらない教育が行われているそうです。これらの大学校を卒業し、大学評価・学位授与機構に認定を申請し、機構側が認めれば、学士といった学位が授与されます。長くなるので本分では省きましたが、法的に「学校」ではない、一般的な専門学校と省庁等の大学校の両者の大きな違いの一つが、卒業時に取得できる資格について、「称号」か「学位」の点だと言えるでしょう。加えて、大学校には運営元からその資金が交付される点が、一般的な専門学校と格差が出る点です。以上、津田敏『学校選びの原則』風詠社、2016年のp.13~19

*5:準学士 - Wikipedia参照。

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